顔
最初から最期まで
そんな勇気もてずにいた
「横顔がすき」
唐突に吐き出した言の葉に
「同感。僕も君の横顔が好き」
――――平然と返さないで欲しい。なんの含みも無いその声
「正面は嫌いなの?」
「嫌いじゃない。ただ、横顔のほうが綺麗」
「・・・同感。」
嘘をつく。
言葉の前の微かなためらいに彼は気づいただろうか
「自分の横顔はわからない」
「あなたの横顔を私は知るわ」
「僕の知らないことを君は知っているね」
「わたしの知らないことをあなたは知っている」
「でも、君は僕のことを知らない」
「・・・知ってるわ」
知らないことを、知っている
わたしはあなたの横顔しか知らない
あなたを正面から見る勇気なんて、最初から最後まで持てずにいた。